スタメンのLeSSの導入と事業部全体を巻き込んだアウトカム文化への道のり
株式会社スタメンのプロダクト組織は、2022年より大規模スクラム(LeSS)を導入しました。スクラム未経験の組織の中で、LeSSを導入するに至った背景、導入に向けた活動、導入後の躓き、そして事業部全体の「アウトカム」への向き合い方に関する変化についてCTOの視点でお話します。
2021年下期に、CTOとして当時の事業部全体においてという課題を感じていました。
・プロダクトの理想状態が共有できていない
・機能リリースという結果にフォーカスし過ぎており、プロダクトの価値提供に目を向ける機会が少ない
また、プロダクト組織へは以下のような課題を感じていました。
・なんとなく一体感がない
・マネージャーへの依存が強く、現場でのリーダーシップの発揮を感じない
・意識がプロダクトロードマップありきなので、優先順位変更のコストが高く、ビジネス上の変化に弱い
・個人にちゃんと仕事がアサインされているかを気にしすぎて、価値提供スピードを意識できていない
2021年の年末にかけて、この課題感をチームへ伝え、少しずつ共通認識を作りながら、2022年1月に以下の組織体制の変更とともにスクラムを導入しました。
・コンポーネントチームの解散
・エンジニアリングマネージャーの廃止
まず3チーム同時にスクラムを導入し、2022年3月より3チームすべて統合し、本格的にLeSSに取り組みはじめました。
スクラム未経験にも関わらず、短い期間で一気にLeSSを導入しようとしたために多くの問題が生じました。まずは体制変更による混乱から始まりました。そして、LeSSのはずなのにチーム同士の助け合いが生まれなかったり、プロダクトの全体のゴールが曖昧になってしまったり、他のCXOやマネージャーの巻き込みにも苦労したりと、上手くいくことばかりではありませんでした。
それでも着実に一歩づつ前進して、1年間を通してプロダクト組織全体のプロセスやカルチャーの変化を感じてきており、徐々に事業部全体としてプロダクトの「アウトカム」への意識が醸成されてきたことを感じています。そして今では、他のCXOを含め組織全体として「アウトカム」への理解も深まり、LeSSの効果を強く実感しています。
私CTOとしてもプロダクト組織のスケールに大きな自信を持てるようになりました。このスケールへの自信がさらなる組織拡大の意思決定を後押しし、東京都内に新開発拠点を立ち上げるに至りました。
本セッションでは、スタメンの会社やプロダクトの紹介、そしてスクラム未経験の組織がLeSSを導入する際に生じる問題点や、ゼロイチでスクラムを導入していく際のCTOならではの視点でお話します。
※本セッションは株式会社スタメンによるスポンサーセッションです。
Outline/Structure of the Talk
- CTOとしてプロダクト組織に感じていた課題感
- CTOとしてスクラム導入に向けた活動
- スクラム導入後の躓き
- チームに起きた開発プロセス・成果物・文化の変化及び、行動変容
- 事業部全体の変化
Learning Outcome
- 事業部全体を巻き込んだアウトカム文化醸成の一例を知ることができる
- 大規模スクラム(LeSS)の導入における課題や成果の一例を知ることができる
- ゼロイチでスクラムを導入していく際の、CTO及びマネージャーのふるまいの一例を知ることができる
- 自信をもって組織をスケールさせる意思決定ができるようになる
Target Audience
Scrum・LeSSを導入中および検討中のCTO/VPoE/マネージャー/スクラムマスター
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Ryutaro YOSHIBA (Ryuzee) - スプリントレビュー Deep Dive
45 Mins
Talk
Beginner
★★★Deep Diveシリーズ第3弾!!★★★
Deep Diveシリーズでは、主にスクラムを始めたばかりの人、実践しているもののこれでいいのか?と不安を持っている人に向けに、スクラムの要素を詳細に解説しています。これまで以下の2つをお届けしてきました。
- プロダクトバックログ Deep Dive(https://slide.meguro.ryuzee.com/slides/107)
- スプリントプランニング Deep Dive (https://slide.meguro.ryuzee.com/slides/111)
シリーズ3作目となる今回は、「スプリントレビュー」についてです。
スクラムの3本柱である透明性、検査、適応は、スクラムのあらゆる役割やイベント、作成物に関係します。
作成物の1つであるインクリメントも当然対象となります。そして、インクリメントの検査と適応の場が、スプリントレビューです。
不確実性の高い問題の解決に取り組んでいる私たちは、スプリントレビューを通じて、自分たちが作っているものが正しい方向に向かっているのかを短い間隔で検査し、学習した内容や環境の変化を踏まえて、適応していかなければいけません。アジャイルマニフェストには「包括的なドキュメントよりも動作するソフトウェアを」という項目があります。
これが意味するところは、現物の重要性です。私たちはビジネス上の目標を達成するためにプロダクトを作っています。充実したドキュメントがたくさんあっても、プロダクトをユーザーに渡せなければ無意味です。プロダクトを使うユーザーがいなくても無意味です。プロダクトを使ったユーザーが、自分たちの課題を解決できなくても無意味です。
つまり、プロダクト(動作するソフトウェア)は核となるものであり、定期的にプロダクトそのものや、プロダクトに加わった変化(インクリメント)を実際に検査し、適応し続けなければいけません。一方で、スプリントレビューが単なる進捗報告の場であったり、意味のある検査ができないようなものを披露していたりするような現場をたくさん見てきました。
これではスプリントレビューの意味がありません。
スプリントレビューはスクラムのイベントのなかで、いちばん重要なイベントです。このイベントをうまく運用できるかどうかで成果は大きく変わってきます。以下に挙げるようなスプリントレビューの鉄則をはじめとして、スプリントレビューを圧倒的に効果的に活用するための基本から応用まで、Scrum Alliance認定スクラムトレーナー(CST-R)、認定チームコーチ(CTC)の吉羽が体系的に解説します。
- なにはともあれインクリメントを見せろ
- フィードバックを得られるようなインクリメントを用意しろ
- スプリントレビュー直前にインクリメントに手を入れるな
- プロダクトの状況や進捗を表す簡単な資料を用意しろ
- デモはプロダクトオーナーと開発者全員ができるようにしておけ
- スクラムチームの外側のステークホルダーを呼べ
- スプリントゴールに応じて、どのステークホルダーを呼ぶかを選べ
- スクラムチーム全員が参加しろ
- スプリントレビューのやり方を改善しろ
- スプリントレビューから逆算してスプリントプランニングしろ
- スプリントレビューの会話のメモを取っておけ
- スプリントレビューで「次のスプリントで対応する」とかコミットするな
- そのスプリントで何も完成しなくても、スプリントレビューをスキップするな
- とはいえ、とにもかくにもインクリメントを提示できるようにしろ
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Ikuo Odanaka - チームのパフォーマンスを引き出す、ワクワクするプロダクトゴール/OKR
45 Mins
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Intermediate
プロダクトゴールについては、昨年のRSGTで長沢さんが素晴らしいセッションを提供してくださいました。では、私が語り得ることは何か?
自分の経験に基づいた話。
ゴールを設定する手前の、そこにいる人がワクワクしていくためのプロセス。
そんな話をしたいと思っています。目標管理手法のひとつOKR。Scrum Fest Mikawa 2022において「OKRはツリーではない」という発表を行いました。
その発表の中では、OKRにおいて何よりも重要なのは「目指さずにはいられないワクワクする目標を作ること」だと説明しています。
これはスクラムのプロダクトゴールに対しても同じことが言えると、私は考えています。ワクワクする、そのゴールを達成せずにはおられないからこそ、私たちは自分たちの状況を公開し、失敗する勇気をもち、互いに尊敬しあいながらゴールに集中し達成を確約するのです。
私が関わってきた組織、チームでもワクワクするOKRを設定できているかどうかがプロダクトゴールの実現度合いと密接に関わっていることを観測してきました。ワクワクOKRを持ったチームは「ありたい姿」と「プロダクトゴール」の一致度が高くなり、主体的にプロダクトゴールに向かうため達成度が高くなりました。それに対しシナシナOKRが手元にあったチームは「こんな目標、達成できると思ってません」とゴールへ向かうモチベーションさえ湧かず、したがって達成度は低い状態でした。
であれば、ワクワクしたOKRを設定しない手はないですよね。言うは易し。
「『ワクワクする目標を作る』?それができねぇから七転八倒してるんだろうがッ!!」そんな声がきこえてくるようです。少なくとも私の胸の奥からはそのような叫びが聞こえてきました。名著「Measure What Matters」でいうところの「組織全体に目的意識と連帯感をもたらし、多様な活動を結びつける」ような目標は、ゴールはどうやって作ればいいのでしょうか。
OKRオタクを自認する小田中がこれまでに経験したうまくいった(ワクワクした)目標設定、うまくいかなかった(シナシナした)目標設定についてふりかえります。
どうやったらワクワクさせられるのか、シナシナを避けられるのかについても触れていきます。そして、目指さずにはいられないOKR、ワクワクいきいきする目標を作り上げるための再現性のあるプロセスについて解説します。ワクワクの源は千差万別、だからこそ再現させるのは難しい。けれども内発的動機を駆り立て、互いのビジョンを共有しながら深く対話することで、壁に張り出したくなるようなOKRはできるんです。おっと、ここから先は本編で。 -
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Kazuhide Inano - アジャイルコーチング × システムコーチング 〜Agile & ORSC are eating the world〜
45 Mins
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Intermediate
アジャイリストなみなさんこんにちは。みなさん、「コーチング」という言葉を耳にする機会が増えたと感じてませんか?これはあくまで個人の観測範囲に過ぎませんが、2022年をふり返ってみると実際にコーチングを学び、探求し、実践する人がこのアジャイル界隈でも増えてきたなと思います。そしてこれはアジャイルコーチのみのことではなく、アジャイルに関わるさまざまな役割の人にも及んでいるとも感じてます。
さて、みなさんは "システムコーチング®(Organization & Relationship Systems Coaching®、以下ORSC®)"というコーチングをご存知でしょうか?
私は2021年中頃からこれを学び始め、2022年はほぼこれを学ぶことに注力しました。いえ、正確に言うといざ始めてみるとこれに注力せざるを得なかったのが実情です。ORSCを学ぶことは少なくとも私にとってはそれほどタフなものでした。正直、もし学び始めの時点まで時が戻るのであれば取り組み方をもう少し考え直すかもしれません。
とまぁしんどいってことを強調してしまいましたが、このプロポーザルを書いた時点(2022/9)ではまだ最後の学びのコースの道半ばではあるものの、決して後悔はしていないってことははっきりと言えます。大変ではあるけれど、自分にとって意味があり、価値がある学びを重ねられていると実感しています。更には既に実際に役に立った体験もしています。そしてこれはRSGT当日の2023/1ではより積み上げられているだろうと確信しています。
というわけで、このセッションでは私自身をサンプルとし、流しのアジャイルコーチとして何を思い、考え、何に価値を感じ、そして何故ORSCを学び、アジャイルコーチングとORSCを重ねることにどのような可能性を見出し、実際にどのように役立ったのかのエピソードにも触れつつ、この先何をしていきたいのかをお話します。
これらがみなさんの普段の中にある関係性への新たな視点や可能性を獲得でき、ORSCの世界へ足を踏み入れてみようと思った時の一歩目の道標となり、そしてアジャイルコーチングとORSCが交わって生まれるパワフルな力を感じられる、そんなセッションにしたいと考えています。
※システムコーチング®、Organization & Relationship Systems Coaching®、ORSC® は、CRR Global Japan 合同会社の登録商標です。http://www.crrglobaljapan.com
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Yushiro Matsutani - CTOがスクラム未経験の組織にLeSSを導入し、プロダクト組織のスケールに自信を持つまでの話
45 Mins
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Beginner
株式会社スタメンのプロダクト組織は、2022年より大規模スクラム(LeSS)を導入しました。スクラム未経験の組織の中で、LeSSを導入するに至った背景、導入に向けた活動、導入後の躓き、そして組織全体の変化についてCTOの視点でお話します。
2021年下期に、CTOとして当時のプロダクト組織へ以下のような課題を感じていました。
- なんとなく一体感がない
- マネージャーへの依存が強く、現場でのリーダーシップの発揮を感じない
- 意識がプロダクトロードマップありきなので、優先順位変更のコストが高く、ビジネス上の変化に弱い
- 個人にちゃんと仕事がアサインされているかを気にしすぎて、価値提供スピードを意識できていない
当時は、プロダクト組織のパフォーマンスに懸念を感じており、また今後開発者が増えたとしても全体のパフォーマンスが上がらないのではとプロダクト組織のスケールに自信がありませんでした。
2021年の年末にかけて、この課題感をチームへ伝え、少しずつ共通認識を作りながら、2022年1月に以下の組織体制の変更とともにスクラムを導入しました。
- コンポーネントチームの解散
- エンジニアリングマネージャーの廃止
まず3チーム同時にスクラムを導入し、2022年3月より3チームすべて統合し、本格的にLeSSに取り組みはじめました。
スクラム未経験にも関わらず、短い期間で一気にLeSSを導入しようとしたために多くの問題が生じました。まずは体制変更による混乱から始まりました。そして、LeSSのはずなのにチーム同士の助け合いが生まれなかったり、プロダクトの全体のゴールが曖昧になってしまったり、他のCXOやマネージャーの巻き込みにも苦労したりと、上手くいくことばかりではありませんでした。
それでも着実に一歩づつ前進して、1年間を通してプロダクト組織全体のプロセスやカルチャーの変化を感じてきました。
そして今では、他のCXOを含め組織全体としてスクラムへの理解も深まり、LeSSの効果を強く実感しています。私CTOとしてもプロダクト組織のスケールに大きな自信を持てるようになりました。このスケールへの自信がさらなる組織拡大の意思決定を後押しし、東京都内に新開発拠点を立ち上げるに至りました。
本セッションでは、スクラム未経験の組織がLeSSを導入する際に生じる問題点や、ゼロイチでスクラムを導入していく際のCTOならではの視点で赤裸々にお話します。そしてプロダクト組織のスケールのヒントになれば幸いです。