システム開発を疑似体験するボードゲーム「ペジテの自転車」
私は大学教員として工学部の学生さんにシステム設計やプロジェクトマネジメントを指導しています。また、共同創業者としてジョインしている会社でもシステム設計の人材育成サービスを扱っており、新入社員やビギナーエンジニアを対象にすることもあります。
学生さんやビギナーエンジニアさんを対象にしてシステム設計を教える場面でよく困るのは「設計やマネジメントの重要性が分からず、様々な方法論やフレームワークを伝えてもピンとこない」ということです。これはよく考えればあたり前のことです。学生さんやビギナーエンジニアさんたちはシステム開発の経験がない(もしくは少ない)ので、開発の全体像や重要なところ・失敗しやすいところ・よくある課題などを知らないのです。そのような状態で方法論やフレームワークを伝えようとしても「なぜそのような方法が良いのか?」や「なぜそんな考え方をするのか?」ということが腑に落ちないため、教える方も教えない方も苦労します。
そのような問題を解決する最も直接的な方法は、経験を積ませるということです。特に失敗経験を経ることで、設計やマネジメントの重要さに目が向いて、学ぶ準備が整います。しかし、大学の授業などの限られた機会の中では失敗経験を経るだけの時間的な余裕がありません。企業における人材育成においても、一昔前のようにたっぷりと時間をかけてOJTで学んでいくという余裕がある場合は少なくなっており、激しい競争環境の中で素早い人材育成が求められています。
そこで私達は、システム開発を疑似体験することのできるボードゲーム「ペジテの自転車」を開発しました。このゲームで上記の「経験しないと分からない。失敗しないと分からない。」という問題を全て解決できるわけではありませんが、導入教材としてうまく活用することで、効果的な教育プログラムを構築&実践することができたと思っています。
「ペジテの自転車」のプレイヤーは、架空の自転車メーカーの新製品開発を担当するチームメンバーになりきって、顧客満足度の高い自転車製品を設計することを目指します。ゲームが進行する中でプレイヤーたちは、顕在化しない隠れた要求があったり、途中で要求が変更されたり、リソースが足りなくなって困ったり、ビジネス環境が変化したり、異なる立場の意見が対立したり・・・と様々な「システム開発あるある」を体験します。そしてゲーム後のディブリーフィング(振り返り)を通して「システム開発において重要なことは何か?難しいことは何か?」を体感的に学ぶことができます。
ボードゲーム「ペジテの自転車」の外観
学生たちがプレイする様子
今回の発表では「ペジテの自転車」のコンセプトやルール、実践結果などをお伝えします。
Outline/Structure of the Talk
- 背景・目的
- ゲームの紹介
- 実践例
- 参加者の声
- まとめと今後
Learning Outcome
- 設計人材の育成における課題の整理
- 設計人材の育成方法の例
- ゲーミフィケーションの活用方法
Target Audience
エンジニア、マネージャー、人材育成担当など。または、ボードゲームが好きな人。
schedule Submitted 1 year ago
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プロダクト開発は難しいですよね。コミュニケーションとスキルがとても必要です。よくストレスいっぱいあります。
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コーチとして、開発チームと仕事を面白くなるためにたくさん実験を作りました。
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Tomonori Fukuta - 組織文化醸成の理想と現実〜田舎で15年スクラムしたらカルチャーバブル爆発するでしょ!え、しないの?〜
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Advanced
ちんもです。
ちんもが所属する企業グループには、社会に誇れる理念と(野中さん流に言うと)腹にズシンとくる価値観や行動原則があり、併せて組織文化を醸成するための様々な施策が実施されています。
組織文化醸成のための部署(!)があり、毎週の様に動画が配信され、経営陣から新人に至るまで、組織文化に関する理解度把握アンケートやe-larningを繰り返し、価値観や行動原則の実践が評価制度、表彰制度に組み込まれるなど、まあやれることは全部やってるんじゃないかと思います。
じゃあもうグループ社員全員「価値観の体現者!」とか、「創業者の意志を継ぐもの」、みたくなってるかというとそういうわけでもないんですよね。それだけ文化をつくるということは難しいのだと思います。ところで弊企業の掲げる価値観、最近すごくアジャイルぽいやつに変わりました。え、変わっていいもんなんだっけ?あ、そうですか。あなたも変えたいんですね。いいけども。
一方でちんもにはちんもなりに生きているなかで、アジャイルと出会い、現状をそうではない方向へ変えていこうとするなかで、その手段としてちんも風アジャイル組織の文化を産み出そう、広めよう、としてきたのかもしれません。
そんなこんなで入社して4半世紀、曲がりなりにもチームをリードするようになってからは15年、そういうことをしてきたわけです。
しかし僕は文化をつくろうとしたのだろうか。軽々しくそんなことは言えるのだろうか。ただ、己がやりたいことをやるために、周囲を巻き込み、だまくらかし続けてきただけのことではないのか。僕がいなくなったらそれまでなのか。では今お前がやり続けていることはなんなのか。
個人が自分の周囲に存在する文化を変えようとする試みと、企業が掲げる文化はどう交わるのか。
自律的に発生する既存組織文化への抵抗組織文化たるカルチャーバブルは、企業の文化をどうしちゃうの?
15年をふりかえり、チームの文化と企業の文化に結果的に影響があった可能性が高いと思われる行動を洗い出し、そこから何かしら見えてくるものを探してみたいと思います。
(長々と書きましたが、本発表は「田舎で十年スクラム」シリーズであり、ちんもとその仲間たちの定点観測コンテンツとなっております) -
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Yuichi Tokutomi - ゲームのように学ぶアジャイル開発
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Beginner
アジャイル開発に興味のあるみなさん、どうやって学んでいますか?
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Takaaki Ouchi / Tsutomu Yasui - スクラムボードゲームで楽しく学びを得ませんか?
Takaaki OuchiAgile ConsultantNEC CorporationTsutomu YasuiConsultantself-employedschedule 1 year ago
45 Mins
Workshop
Beginner
スクラムを題材にしたオンラインボードゲームでスクラムあるあるを学ぶワークショップです。
オンラインボードゲームプラットフォーム「asobann」で作成したオリジナルボードゲームをやります。プレイヤーはプロダクトオーナーとなって開発チームと一緒に様々なスクラムあるあるに遭遇し、成長していきます。価値のあるプロダクトをリリースし、お金を一番稼いだプレイヤーが勝利を得ます。
楽しくスクラムを学びましょう。ダイスロール!!
※プレイ人数は2〜4人です。他の方は見学となりますが、体験を希望される方には体験できる場をご用意する予定です。
ボードゲームのストーリーは架空のものです。登壇者の発言は個人の見解であり、所属する組織とは関係ありません。 -
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Tomoko Sohda - スクラムネイティブなスクラムマスターがやらかした失敗とそこからの巻き返しの物語
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Beginner
freee株式会社でエンジニアをやっています。宗田(そうだ)です。
エンジニアでありスクラムマスターでありエンジニアリングマネージャーでもあります(兼任したからこそ学べたことも多くあり兼任してよかったなと感じていますがその話は今回はやりません)。新卒で入社したSIer(前職)でスクラムをやっていたためエンジニア歴イコールスクラム歴です。
前職でのアジャイルエバンジェリストや社外コミュニティ活動で先人の行動や考えを確と学ぶ機会も多くあったため実践で大きな失敗もあまりなかったように感じていました。
が、それも自分に力があったわけではなく周囲のサポートがあったからこそだったのだと痛感する失敗を経て、現在に至ります。ただし、単に失敗しただけでは終わりません。
そこからどうやって巻き返したのか。失敗から何を得たのかをこのセッションでお話しします! -
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Jean-Baptiste Vasseur - リーダーとは何か、その答えをずっと探していたがCAL2を受けてやっと理解し始めた話
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Intermediate
昨年弊社のメンバーが徐々に増えてきて、自分としてよりリーダーらしい立場と振る舞いをとっていきたいと考え始めましたが、そもそもリーダーとは何か、そこからスタートする必要がありました。
色んな書籍やネット記事を読めば大体のことが理解できますが、相反する考え方もあれば自分としてこういうリーダーになりたいというものがちゃんとフィットするものも見つかりませんでした。
そこで2020年9月にScrum AllianceのCAL(Certified Agile Leadership)プログラムに出逢いました。
よし!CAL1とCAL2を取得してヒント探しに行くぞ、と。
そして2021年4月現在、無事終わりました。確かにヒントは得られました。
しかし、経験したこと、学んだこと、得られたものは想像を遥かに超えていました。
皆さんにもぜひアジャイルリーダーの旅に出て欲しいという気持ちを込めて私のアジャイル・リーダー・ジャーニーを語りたいと思います。