Retrospective で Problem -> Solution をだすという KAIZEN のやりかたが、日本ではとても普及している。アリスターコバーンのアイデアに基づくKPT(Keep/Problem/Try)フォーマットは、日本ではデファクトと言っていい。みんな改善が大好きで、改善点が出ないようなふりかえりは意味がないとすら思っている人もいるくらい。
アジャイルコーチたちはスクラムマスターからこんな相談をよく受ける。「ふりかえりでの悩みがあります。改善点がでないんです。」「でてきた改善点がちっとも解決されないんです」「改善しないのでふりかえりをやめてしまいました」
日本での長いコーチングの経験に基づき、私たちは改善を中心にしたふりかえりには問題がいくつかあることを発見した。
1. 暗くなること
2. 改善点は仮説であり、実現可能かどうかはわからないこと
3. だから、いくらでもアイデアを出せるし議論ができてしまうこと
4. 同じような課題や改善点が残り続けることで、人々がポジティブになれなくなっていくこと
これらの問題によって、ふりかえりが長時間になってしまったり、疲れてもうやりたくないと思ったり、楽しくない、と思うようになってしまうことが、よくあるのだ。チーム自身がふりかえりを行うので、ミーティングが長くなれば、作業にかけられる時間が減ってしまう。楽しくもないし改善もしないようなふりかえりなら、やめてしまうのが解決策なのだ!
Linda Rising の Positive Retrospective というアイデアを発見した。LindaはProject Retrospective の第一原則を参照し、まずこれまでやってきたことを肯定することからはじめ、その上で代替案を出していこう、ということだった。
そう、私たちはまず、チームがこれまでになにができたかを確認するセレモニーをやらなければならないのだ。Fearless Change における Small Successes パターンのように。Scrumがいうベロシティが意味するチームの能力、現在位置を確認し、完了/実験と成長と学びを喜ぶセレモニーが必要なのだ。チームメンバーがそれぞれ成し遂げたことを確認し、何に喜び、何を学びと感じたのかを共有しあう。
私たちはこのふりかえりにあたって、壁に貼る、一つのフォーマットを考えた。Fun! Done! Learn! である。このフォーマットの特徴はベン図になっていることだ。複数の要因にかかる要素を示すことができる。例えば楽しく新しいやり方を覚えたのなら、Learn!かつFun!とすることができる。
多くの場合、学びは喜びだ。チームは継続的な学びを繰り返してどんどんよくなっていく。そしてそれは喜びにも繋がる。喜びはチームの燃料になる。チームはまた、より多くのDoneを生み出していく。
当初私たちはDoneではなく、Deliveryという言葉を使おうとした。ただリズムがよりよいDoneを使おうという話になった。Regional Scrum Gathering Tokyo で Hunter Industries の Chris Lucian が実験について講演した。そうだ、実験だ。私たちは Done の中に実験も含めるべきだと気づいた。
このフォーマットについて Tsutomu Yasui がブログに書いたところ、数週間のうちに日本中で Fun! Done! Learn! が行われるようになった。ブログやfacebookで毎週のように「やってみたよ!」という報告が届いている。Regional Scrum Gathering Tokyo でも Kazuki Mori が Fun! Done! Learn! のボードを作ったところ、貼りきれないほどのポストイットが壁を埋め尽くした。
私たちはなぜここまで Fun! Done! Learn! が人々にポジティブな効果をあたえるのか、科学的なエビデンスをまだもっていない。しかし、このムーブメントになにか重要な発見があるのではないか?とすら思うようになった。
DevOps Days Tokyoの場で Fun! Done! Learn! をやることで、この現象が様々な現場でどのような結果に繋がるのかを実験したい。ぜひ、皆さんの職場に持ち帰って実験してほしいと考えている。実験はDone!でありFun!であり、Learn!につながる。まさにアジャイルなマインドセットを Fun! Done! Learn! が呼び起こし、見える化するのではないかと考えている。
この最新のレトロスペクティブについて皆さんに共有し、フィードバックをいただければと考えている。