「親会社が、本気でアジャイル開発をやるそうだ」
4年前のある日、上司に呼ばれてそう告げられた私は、システム子会社から親会社へ出向となり、親会社組織の一員としてアジャイル開発導入・推進の取り組みに参加することになりました。
ある程度の規模や歴史のある会社で何か新しいことをやろうとか、組織を変革しようとすると、組織の大きさ・複雑さゆえの難しさがあることは多くの方が実感されていると思います。
もちろん私たちもその苦労は承知していたので、すでに変革を遂げた会社や先行他社の事例を参考にするべく多くの事例を収集し、可能であれば直接インタビューも実施しました。
その事例の多くには、熱いパッションと高い行動力を持ったリーダーが登場します。
エグゼクティブ層がトップダウンで推進するパターン、ボトムアップだけど熱い想いと高い行動力でどんどん変えていく人がいるパターン…
私は推進組織のメンバーと、そんな事例をもとにパワポ資料を作りながら、ふと考えました。
あぁ、みんなすごいなぁ、うちと同じようなお堅い大企業で、こんなに進んでるんだ。
で、、、当社だと、誰がそれをやるんだろう??
私は性格上「他人のサポートに喜びを見出すタイプ」なので、できれば自分以外の誰か「すごい人」が現れて、ババッと行動して、あっという間に状況を変えて欲しい、私はそのサポートがしたいと思っていました。
しかし、もちろんそんなふうに状況が変わることは滅多にありません。
熱い想いをもってアジャイル推進を始めた初期メンバーは定期的な人材ローテーションで次々といなくなり、中堅層は「アジャイル」になかなか馴染めず、若手層は転職していってしまう。年数が経つにつれて高まり続ける期待値に、最古参の私は苦しい日々が続きました。
そして取り組みが始まって4年目の2022年。
ふと、潮目が変わってきたことに気づきました。
「今まで関わってきた開発の中で、一番満足度が高い」
「次はアジャイルでやりたい」
そんな声が、届くようになってきたのです。
うちの会社に相変わらず唯一無二の「すごい人」はいません。何か逆転ホームランのすごい施策を打ったかというと、そんなものも思い当たりません。
しかし自分たちにできる範囲で施策を考え、それぞれの得意分野で変革に向けた行動を続けることで、確かに何かが変わってきたのです。
このセッションでは、アジャイル導入を開始してからの4年間、当社のアジャイル推進組織がどのように変革にチャレンジしてきたかをご紹介すると共に、私自身がいつの間にか社内の「(ちょっと)すごい人」に変化していた話をします。
「自分なんかが組織を変えられるんだろうか…」「アジャイル推進が進まない…」と不安に思われている方に、私たちも変わってきたから、きっとあなたも大丈夫!と伝えられたらと思います。